安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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私の夢・あなたの夢
くすくすと、柔らかく、君は笑う。
可愛らしい笑み。
ぼくと同じような簡素な白いワンピース。でも、彼女の方が似合っている。

「花梨ちゃん、あなたの夢はなぁに?」

自由になりたい。
ぼくは答える。
君は純粋に無垢に、ふうんと、頷いた。
一つ年下の、可憐な女の子。
お人形のような、ふわふわとした雰囲気の、彼女。
名前は、「こよみ」。
彼女のことは、この名前くらいしか知らなかった。
けれどぼくは、彼女が好きだった。

暗い淵にいたぼくに、笑いかけた彼女。
動けなくなりそうだったぼくの、話し相手。

「こんにちは」
「・・・・・だれ?」
「私はこよみ。あなたは?」
「・・・・・・・、・・・・・とけい」
「お名前を聞いたのに。とけいちゃん?」
「・・・・・、・・ん・・・」
「聞こえないわ。もう一度、言って?」
「・・・・・かりん」
「かりんちゃん。花に梨でかりんちゃん?素敵ね。私、花梨の蜂蜜漬け、好きよ」

ぼくの話し相手にするためだけに、連れて来られたと聞いて。
申し訳なくて辛くて問い詰めたら、笑って。
首を振った。

「花梨ちゃんとお話するのは楽しいわ」

優しい子。
ぼくに笑ってくれる、人。
ぼくと話してくれる、人。

――――そう。これは、こよみちゃんとの、最期の会話だ。

夢を聞かれて。
ぼくは答えて、「こよみちゃんは?」と、聞き返した。
そして君は笑う。
可愛らしく、はにかむように、優しく。

「褒められること」

誰に?

そう問いかけては、いけなかった。
けれどぼくは首を傾げて、そう問う。
尋ねて、しまう。

「大好きな、ジュダ様」

嬉しそうに。
照れたようにはにかんで、その人の、名を。
紡ぐ。

どうすれば褒めてくれるの?と。
聞く前に、当然のようにぼくと彼女の話を盗聴していた黒服の男たちが部屋に踏み込んで来て、そして――――・・・・。

赤い花が、咲いた。

ぼくには、どうして彼女が撃たれたのか、わからなかった。

答えが知れたのは、彼女の大好きな「ジュダ様」が、ぼくを殺そうとぼくの前に現れた、その時。

彼は言う。

「日本には有名な台詞があったね?歴史上の偉人が言ったらしいじゃないか。鳴かぬなら――――殺してしまえ、ってね。暦は上手く入り込めたんだけど、残念だったな」

ああ、と。
思う。
やっぱりあの子が死んだのは、ぼくの所為だった。

こよみちゃんは、この男が、好きだった。
大好きだと、心酔したような、大切なものを見つめるような目をして、語った。

ごめんね。
夢を奪ってしまって、御免ね。こよみちゃん。










//22歳?(21歳以降)

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