静寂の中の音 |
2007年10月17日 03時35分
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ぴちゃん。
それは規則的な音。
それは継続的な音。
暗闇の中で、静寂の中で、その音だけが耳に響く。
視界が利かないのはキツく縛られた目隠しの所為。
それしか音がないのは、此処がぼくともう一人以外誰も居ない密室な所為。
ぴちゃん、ぴちゃん、と。
それは水が立てる音。
それは、液体が液体の中に落ちて、起こる音。
視界が真っ暗でも。
ぼくには、その部屋の映像が視えた。
1秒先のその場所の未来の画が、視えていた。
ぴちゃん、ぴちゃん、と。
ぼくではないもう一人の人の手首から、赤い液体が雫となって落ちる様が、視えていた。
そしてそれが。
途切れる、瞬間も。
動脈を切った手首から流れる血が、途切れるという意味は、流石にわかる。
つまり、この人は。
ぼくと同じ密室に閉じ込められて、数刻前に手首を切ったその人は。
もうすぐ、死ぬのだ。
ぼくは道具に堕ちても、「生きる」ことを選び。
彼は「生きる」ことを捨てても、気高き死を選んだ。
ああ誰か、教えてください。
ねぇ。
――――――いったいどちらが、正しかったの?
//10歳
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