殺して欲しいと願われて |
2007年10月12日 02時01分
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「―――嫌です」
と。
彼はそう、答えた。
切実な願いだった。
心の底からの、願いだった。
考えて考えて、そうして漸く決意した、願いだった。
けれど、彼にはどうしても頷くことは出来なかった。
20歳を過ぎた女性は、何もできない子供のように頼りなく、微笑った。
震える手で、彼の手を取る。
そしてもう一度、同じ言葉を繰り返した。
先ほど彼が拒否した、その願いを。
首を振る。
いやだと我侭をいう子供のように、無意味に、首を振る。
その頬を、涙が一筋零れ落ちた。
「おねがい。おねがいだから―――――」
「お願いだから、ぼくを、殺してください」
彼に、頷けるはずがなかった。
//22歳?(22歳以降)
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