解けたリボン |
2007年10月9日 23時22分
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肌寒さを感じる朝の時間に、神社に足を向けた。
最近、よく来る神社。
清廉な空気は何時でも変わらないけど、寒さのためか朝は特に清い気がする。
誰にも会わなくていい。
ただ、仕事の前に此処に来ると、頑張れる気がした。
本当は。
誰かに、会いたいのかもしれないけど。
会ったら助けを求めてしまいそうだし、やはり会わないほうがいい。
お賽銭を入れて、拍手を打って、礼をして。
朝だから、鈴は鳴らさずに終らせる。
そしてくるりと振り返った境内の、石畳の上で。
何処かから解けた、綺麗なリボンが眼に入った。
来た時は気付かなかった。
可愛い、暖かい秋色のリボン。
拾ってみて、誰のだろうと首を傾げた。
一瞬脳内に長い髪の少女が浮かんで、その想像はそのまま無意識にその少女の予知に繋がる。
境内から少し離れた御神木付近を、大きな犬と一緒に何かを探している、女の子。
何分後の未来かはわからない。
何時間後、何秒後かもしれない。
探しているものがこのリボンとも限らない。
けど。
ぼくの足は、自然と御神木の方へと向いた。
注連縄の掛かった、立派な御神木。
まだ人影は一つもなく、木の葉が風に擦られる音がさらさらと響いていて。
素敵な樹だと、なんとなくそう思った。
手にしたリボンに目をやる。
何処にあれば見つかり易いかと少し考えて、女の子の目線に合いそうな高さの枝の先に、緩く結んだ。
「これで、大丈夫かな・・・」
逆に見つかり難くなっていたらどうしようと、少し考える。
でもこれくらいしか、ぼくにはできそうもなかった。
ふと思いつきで、御神木に手を添える。
「――――・・・無事見つかりますように」
お願いしますと、小さく祈った。
解けたリボン。
無事もとの場所に、戻れればいい。
あのリボンには、還れる場所が、あるのだから。
//21歳
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