お祭り騒ぎ |
2007年10月6日 23時29分
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「だから、別に話しててもいいから、此処じゃないところでっ!」
「おねーさんが遊んでくれるなら移動してもいいぜー?」
「きゃははっ、それいいねー。でもちょっと一人じゃ大変じゃね?」
「いいんだよ、な?おねーさん」
特に何があるわけでもないのに、お祭り騒ぎをしている若者たち。
日本の繁華街では、割とよく見られる光景である。
人の迷惑も考えないお祭り騒ぎの中心に、一人の女性が立っていた。
真剣なその女性に対して、若者たちはどこまでも軽く笑う。
揶揄するように掛けられるのは品性の薄い実のない言葉。
女性の肩に手を伸ばして、にやにやと締まりのない表情を作った。
肩に乗せられた手を払いのけて、女性はまた声を荒げた。
「だからっ・・・!!」
先ほどからのやり取りは、平行線を辿っている。
女性は彼らにこの場所から動くようにいい、若者たちは相手にせずにそれをからかう。
何度女性が移動するように訴えても、それが続いていた。
「だから、此処は危ないんだってっ!」
お祭り騒ぎは止まらない。
先ほど手を退けられた一人が、今度は強引に女性の腰を抱く。
「っ、きゃ!?ちょっ、離して!いい加減話を聞いてってば!」
「此処は危ないんだよねー?わかったわかった」
「笑い事じゃ・・・・!」
彼女が真剣になればなるほど、喧騒は大きくなる。
お祭り騒ぎは加速し、彼女の意思に反した方向へ突き進む。
そしてそのお祭り騒ぎは、突然悲鳴と狂騒に取って代わる。
係わり合いになりたくない、とばかりに遠巻きに通り過ぎていた通行人の中から、声が、響いた。
「危ないっ!」
その声が発された時には、もう、遅い。
女性を取り囲んでいた若者たちの半分が、アクセルとブレーキを踏み間違えたトラックに、組み敷かれ地に伏せる。
女性も無傷では居られずに、建物に突っ込んだトラックが作り出したガラスの破片で無数の傷を作った。
けれど若者たちに囲まれていたために、それはさほど大きな傷ではなく。
仲間を置いて走り去る残り半数には目もくれず、女性は地に伏せた若者たちに駆け寄る。
唇を噛み締めて、呆然としている群集に呼びかけた。
「救急車をっ!」
間に合わなかった――――・・・。
彼女はまた、後悔を一つ募らせる。
//21歳
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