安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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突き刺さる言葉
ぼくは断罪を受ける。





「お前がっ・・・!お前が“狂った時計”か!」

ぼくと同い年くらいだろうか。
少女はぼくを真っすぐに睨み付けて、悲痛に叫ぶ。

「お前があんな予知をするから、兄貴は―――――・・・・・!!」

この建物に銃器は持ち込めない。
持って入れるのは、ファミリーの幹部だけ。
この建物、だけは。
例外がない限り、銃を抜いてはいけない。

だから、だろうか。
少女が取り出したのは、鈍く光る銀色の。

「お前の所為で、兄貴は死んだんだっ!」

突き刺さる、言葉。

今までどれだけの未来を狂わせてきたのだろう。
今までどれだけ、誰かを不幸にしてきたのだろう。
今まで、どれだけ。

命を奪ってきたのだろう。

ぼくが視なければ。
ぼくが告げなければ。
ぼくが。



「兄貴が死んでお前が生きているなんて、オレは絶対認めないっ!」



ぼくが、いなければ。



少女はナイフを振り上げる。
振り下ろす先は正確に、ぼくの左胸。

―――――視えたのは、床に溢れる赤い、血。

けれど刄がぼくに届く、直前に。


ぱんっ、と、まるで出来の悪い玩具のような、軽い音が、した。


崩れ落ちる少女の瞳から、涙が零れ落ち。
ついさっき視た赤い床が、目の前に、出来た。

今まで少女が立っていた位置を緩慢に見れば、そこには、銃を構えた男の姿が見える。
ああ、彼は、幹部、だから。
・・・・・だから?
思考が上手く働かない。

立ち上る硝煙の匂いと広がる鉄錆の匂い。
動かなくなった少女と、近寄る靴音。
握られたままの、ナイフ。

酷く、唐突に。
今何が起きたのかを、脳が理解した。

「――――――――っ!!」

叫んだのは確かにぼくだった筈なのに、何故か、声は声にならなかった。
込み上げる吐き気。
気持ち悪い血の匂い。
動かない、動かない、人の形の、肉塊。
光の宿らない瞳は、未だぼくを真っすぐに睨み付けて。

「っ・・・、う・・・ぁ・・ぁ・・・・、あ・・・・・!っ、いやあぁあああ――――――っ!!」

もう、何を嘆けばいいのか、よくわからなかった。

『お前の所為で―――――』

脳裏に蘇るのは、そんな声。

ボクノセイデ、タクサンノヒトガシンダノニ。

どうしてぼくは、生きているのだろう。

どうしてぼくは。


それでも生きたいと、浅ましくも思ってしまうのだろう。










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