突き刺さる言葉 |
2007年9月8日 16時02分
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ぼくは断罪を受ける。
「お前がっ・・・!お前が“狂った時計”か!」
ぼくと同い年くらいだろうか。
少女はぼくを真っすぐに睨み付けて、悲痛に叫ぶ。
「お前があんな予知をするから、兄貴は―――――・・・・・!!」
この建物に銃器は持ち込めない。
持って入れるのは、ファミリーの幹部だけ。
この建物、だけは。
例外がない限り、銃を抜いてはいけない。
だから、だろうか。
少女が取り出したのは、鈍く光る銀色の。
「お前の所為で、兄貴は死んだんだっ!」
突き刺さる、言葉。
今までどれだけの未来を狂わせてきたのだろう。
今までどれだけ、誰かを不幸にしてきたのだろう。
今まで、どれだけ。
命を奪ってきたのだろう。
ぼくが視なければ。
ぼくが告げなければ。
ぼくが。
「兄貴が死んでお前が生きているなんて、オレは絶対認めないっ!」
ぼくが、いなければ。
少女はナイフを振り上げる。
振り下ろす先は正確に、ぼくの左胸。
―――――視えたのは、床に溢れる赤い、血。
けれど刄がぼくに届く、直前に。
ぱんっ、と、まるで出来の悪い玩具のような、軽い音が、した。
崩れ落ちる少女の瞳から、涙が零れ落ち。
ついさっき視た赤い床が、目の前に、出来た。
今まで少女が立っていた位置を緩慢に見れば、そこには、銃を構えた男の姿が見える。
ああ、彼は、幹部、だから。
・・・・・だから?
思考が上手く働かない。
立ち上る硝煙の匂いと広がる鉄錆の匂い。
動かなくなった少女と、近寄る靴音。
握られたままの、ナイフ。
酷く、唐突に。
今何が起きたのかを、脳が理解した。
「――――――――っ!!」
叫んだのは確かにぼくだった筈なのに、何故か、声は声にならなかった。
込み上げる吐き気。
気持ち悪い血の匂い。
動かない、動かない、人の形の、肉塊。
光の宿らない瞳は、未だぼくを真っすぐに睨み付けて。
「っ・・・、う・・・ぁ・・ぁ・・・・、あ・・・・・!っ、いやあぁあああ――――――っ!!」
もう、何を嘆けばいいのか、よくわからなかった。
『お前の所為で―――――』
脳裏に蘇るのは、そんな声。
ボクノセイデ、タクサンノヒトガシンダノニ。
どうしてぼくは、生きているのだろう。
どうしてぼくは。
それでも生きたいと、浅ましくも思ってしまうのだろう。
//17歳
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