安 蘭 樹 の 咲 く 庭 で

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主導権を握る
「お前が不動花梨か」

両腕を掴まれてモノのように運ばれて、最初に聞いた言葉。
ここまでぼくを連れてきた表情のない黒服たちと違って、シニカルに笑う日本人。
飛行機に乗ったのは知っていた。
ぼくが「買われた」のはマフィアだ。
その拠点が日本ではないことも、少し考えれば分かる。
イタリアか、アメリカか。それとも?
よくわからないかったけど、それはあまり重要ではなかった。

「・・・・・ガキの相手をすんのか。面倒だな」

日本人。
明らかに毛色の違うこの人は、幹部なのか、それとも違うのか。
重要なのは、それ。

「・・・・あなたは、誰」
「・・・・・・・・・。口の利き方に気をつけろ、ガキ。俺より偉いとでも思ってんのか?」

その台詞で、とりあえず、確信する。
この人は、それなりに、偉い。

この先。
ぼくがぼくの人生を歩むためには、ここで。
この男と対峙して、主導権を握らなければならない。
一時でもいい。
一瞬でも、構わない。
ぼくの要求を、ぼくの処遇を、認めてもらわなければ、ぼくに未来(さき)はない。

「お兄さん」
「お前の役目は俺の言った未来を見て俺に伝えること。他はない。言うことも以上だ。連れてけ」
「・・・・・お兄さん、ぼくを信用できるの?」
「・・・・あ?」

賭けに似た、綱渡りの、攻勢。
さぁ――――背筋を伸ばせ。目を、逸らすな。

「予知なんて、信用できなければ使えない。使えない予知は、お兄さんたちには要らない。ねぇ、どうやって、ぼくを使う?」

主導権を。

その手に、握れ。





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