「いつか見た空」様より
「エアギア好きさんに10のお題【動】」 から
たった一人のライダーに、魅了された。
その技に。
目が釘付けになって、離れなかった。
伝説の――――と。
誰もがそう口にする理由を、初めて知った。
02:技
「sleeping forest・・・」
眠りの森。
その名前を聞いたことがない者は、モグリと相場が決まっている。
A.Tをやる者は、『王』を知ると同時に、そのチームの名前も知る。
屍累々のとある廃工場、貼ってあったステッカーをぺりっと剥がして、書いてある名前を小さく呟く。
ふーん。
それが、感想。
元の場所にまたぺたりとステッカーを貼り直して、そのままその場を去った。
俺は、『王』を蹴った人間だから。
彼女らのすることにも他の王たちがすることにも、関与する資格は無い。
というかまあ、その権利を細切れにして捨てた、と言うのが正しい言い方なんだが。
言うなれば世捨て人に近い。
俺はただ空を走るのが好きなだけだから、それだけが出来ればよかった。
チームを作ってはいるけど、それはただ、その方が飛び方にバリエーションが出来るからという、それだけ。
多分俺は、ずるいんだろうと思う。でも。
もう真っ平。
ソレが一番的確なコトバ。
現在の「荊の王」は一体誰だったかと、そんなことを軽く思った。
空を駆ける。
いつものたまり場へ顔を出せば、もう何人かの先客が居た。
「ようトカゲ」
「トカゲ言うなって。今日早いね?」
「聞いてくれ、なんと仕事が早く終わったんだよ!」
「オメデト」
此処はA.Tライダーのたまり場としては有名な場所だから、知った顔も知らない顔も居る。
知った顔と他愛も無い話をすれば、「トカゲ」の呼び名に何人かが反応した。
・・・・・・・それで反応されるのも複雑なんだけど、俺。
チームのメンバーはまだ居なかったので、先にウォーミングアップを始めることにする。だってただ待ってるなんて暇だ。
「お、走んのか?」
「ん、準備体操」
何も考えずただ楽しく、空気を蹴った。
技の途中で観客の一人と、偶然眼が合う。
呆然としているように見えるその女の子に、見覚えがあった。
にっと。
笑う。
技の途中だったからすぐにその子は見えなくなって、空と月と星だけが視界に広がった。
満面の笑みが顔に浮かぶ。
――――――――・・・うん。
やっぱ、飛ぶのは楽しい。
「眠りの森の王様ー」
背後に回って小さく呼べば、技の途中に見かけた女の子は警戒も顕にばっと振り返る。
呼んだのが俺だったことに驚いた顔をして、それから呼び名にだろう、少し顔が曇った。
「・・・・・野山野林檎です」
「ああ、悪い。前の人は名前知ってたんだけど。今のは顔しか知らなくて。林檎な、ヨロシク」
「あ、はい。えっと・・・・宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げた「荊の王」、もとい「林檎」に、にこっと笑う。
「さっき俺の走り見てただろ。どうだった?」
俺は自分の走りの感想を聞くのが結構好きだ。
わくわくと問えば、林檎は軽く眼を瞠って、それから何故か若干頬を赤く染めた。
「・・・・・・・・、・・・・・・眼が、離せなくて、驚いた」
今度は俺が眼を瞬く。
うわ、可愛いなおい。
このストレートな殺し文句に俺は頬を緩ませて、手を開いて差し出した。
「俺は若狭未龍。褒めてくれてありがとな。嬉しいよ」
俺の名前を聞いて、林檎はまた眼を瞠った。
//エアギア夢主&野山野林檎
林檎好きなんですよあたし。あの子ちょっと(?)馬鹿で可愛いわ。
何より強いし。王様ー!素敵だ荊の王。
ちなみに最初の5行は一応林檎・・・・の、つもり。
拍手有難う御座いました。